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企画用倉庫

Twitter交流企画「パンドラ」/うちの子総出学パロ企画の倉庫。

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椎束 朔太郎(PNP)





▼椎束 朔太郎


アルヴァドール軍・研究班所属。
この2年間で平和ボケしたのか、やや抜けた発言が多くなった模様。
恋仲であるアルジャーノンさんを引っ張ってどこかに出掛けるのがとても好き。

研究班として「夜の七日間」の解明に勤しむ中、自分の目の前で死んだはずである、楠宮オトギの再会と、元後輩であるルクウィルの出現により、やや戸惑っている様子。
再びオトギと笑い合える日がくるとは、と喜んではいるが、このままでいいのだろうかと迷っている。




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棗(PNP)



▼棗(なつめ)

元々スラム街をフラフラと徘徊していた青年。
この2年の間にフィーダムデリアから出て、他の街で暮らしていた。

親友であるルクウィルの墓参りに出向こうとしたが2年ぶりなのでふんぎりがつかず、数日間街をふらふらしていた所、今回の事件に巻き込まれ、親友と再会することになる。

ルクウィルへの贖罪への気持ちが強く、このまま自分は死んだままの方がいいのではないか、と迷っている。

再会。-後編-






 オトギが少女――アリョーシャの光を間違える筈がなかった。
 何度も何度も迷っていた自分に導を立ててくれた光。
 黒く歪みきった今でも、根強く己の胸中で瞬いている、眩しくも暖かい光を。

「…………、な、んで……」

 乾いた喉から発せられた声は、今にも消え入りそうな程に小さかった。アロウに向けられていた剣先が、オトギの腕と共に力無く地の方へと降りていく。
 見てとれる程に動揺し、隙だらけなオトギに対して、アロウは反撃を行う事も容易であった――だが、出来なかった。先程までの残忍な表情が抜け落ち、見えぬ目で少女の光を捉えようとしている彼の姿に、戸惑ってしまったのだ。

「ヴェラに聞いたのよ。オトギはここにいるって」

 アリョーシャは真っ直ぐな目でオトギを捉える。その仕草は昔――オトギがアルヴァドール軍に在籍していた頃――から何も変わってはいなかった。どこまでも純真で、変わらずに自分を慕っている目だ。それはオトギにも痛いほどに通じていた。

 ――何故、こうも変わらずにいられる。

「近寄ンな!!」

 手にしていた剣先を、すぐ近くまで寄ってきていたアリョーシャの眼前へと向けた。アリョーシャの光の歩みがピタリと止まる。色が変わっていく。

「ゴッドチャイルドが何にしに来た。自ら捕まりに来たとでも言うのかよ」
「捕まったら、オトギと一緒にいられる?」

 アリョーシャの言葉に、オトギの表情が、光が、黒く歪んでいく。昔から彼女はこうだ。発する言葉に、感情に、一辺の迷いもない。
 昔は彼女の真っ直ぐな言葉で前を向く事が出来た。
 ――けれど、今は。

「ふざけんじゃねェよ!殺されたいか!!」

 オトギの柄を握る手に力が入る。
 再びアリョーシャが前へ足を踏み出そうものなら、その剣先は間違いなく彼女の首元を貫くだろう。
 しかしアリョーシャ自身には、一切の怯みもなかった。ただただ、目の前の剣先の主を見つめている。

「……これ以上近付いてみろ、アリョーシャ。二度とそんな口が聞けねェようにしてやる」
「てめぇ!無抵抗の人間まで、」
「関係ねェ奴は黙ってろ!!」

 この状況を見かねたアロウが口を挟むが、その声をオトギの怒号が遮る。
 余程に余裕がない様子であることは、今は単なる傍観者でしかないアロウにも十分過ぎる程伝わっていた。その事はオトギ自身も感じているのだろう。アロウから感じ取れる、困惑の色。
 何故、自分はたった一人の少女に対してこんなにも動揺しているのか。

「コイツは人間でもねェ、軍が所有していたゴッドチャイルド様なんだよ!昔優しくしてやったのが余程お気に召したんだろうな。こんな所までノコノコ来やがって」

 オトギは動揺を隠すように、忌々しく言葉を吐き捨てる。

「昔とは何もかも違ェんだよ、アリョーシャ。その頭で分かったならとっとと帰れ。……二度と面見せんじゃ」
「変わってないわ、オトギは」

 先程まで沈黙を保っていたアリョーシャの凛とした声が、オトギの表情の色を変えた。
 アリョーシャは剣先に手を添え、柔く横にずらしてオトギの元へ、一歩、また一歩と歩み寄っていく。

「昔と変わっていない、オトギの心にある光は」

 オトギの胸元へ、そっと掌を当てる。オトギから発せられていた刺々しくアリョーシャを取り巻いていた黒い光が、溶けるように消失していく。
 その場でアリョーシャを斬り捨てる事など容易い。その手を振り払うことも造作ない筈――だった。
 次々に脳裏から溢れる彼女と過ごした過去の記憶が、それらの行動を躊躇わせていた。

 最後に彼女を目にしたのはいつだったろう。
 その日も任務に自分も付いて行くと言って聞かず、自分の服の裾を握っていた手。聞き分けのないその手をやんわりとほどいて宥めていた事を思い出す。また帰ってくるから、と。

 長く会わない内に大きく、暖かくなっていたアリョーシャの手を、オトギには振り払う事が出来ない。手にしていた剣を地面に落とし、ぼんやりと映えるアリョーシャの光を目で捉える。
 封じ込めていたはずの感情が、まるでアリョーシャの手によって放たれていくようだった。

 ――誰よりも、彼女に会いたかったのだと。


「アリョーシャさん!!」

 聞き覚えのある声によって、現実に引き戻されたような気がした。アリョーシャが振り返り、オトギが顔を上げる。
 その先は、一度は道を違えた“元”親友――椎束朔太郎の色が見えた。オトギは堪らず息を飲む。その行動は朔太郎も同じだった。

「……オ、トギ……か……?」
「………今日は馴染みによく会う日だな」

 表情を苦くしながら、オトギはアリョーシャの手をようやく振り払った。地に落ちた剣を拾い、アリョーシャに、朔太郎に背を向ける。
 アリョーシャが再びオトギの手を取るも、先程までの動揺は何処へ行ったのか、強引に突き飛ばす。体勢を崩したアリョーシャを朔太郎が受け止めるが、彼女は体勢を直し、尚オトギを追おうとする。

「来んじゃねェ!」

 背を向けたままアリョーシャを制す。朔太郎もアリョーシャの肩に手を置き、目の前の男を追う事を良しとしない。アリョーシャの朔太郎への訴えは、朔太郎が首を左右に振る事でいなされてしまった。

「……おい、ガキ」

 次に放ったオトギの言葉は、アロウに向けられていた。呆然としていたアロウは、その声が自分に宛てられたものだと理解するのに時間がかかったようだ。

「潮時だ、帰ンな。オラクルはあのまま捕まってる女じゃねェ」
「……お前、オラクルを昔から知ってんのか?」
「……古い馴染みだよ」

 それだけアロウに言い残し、オトギはその場を去っていく。アリョーシャはやだ、オトギ!と何度も名を呼ぶ。

 オトギがその声を受けて振り返る事は、無かった。








―――――――――――

アリョーシャちゃん、お借りしました!




鏡合わせ。




 世界には自分と同じ顔付きをした人間が三人いると、聞いたことがある。今までは迷信として小耳に挟んだ程度であり、信憑性など気にしたこともなかった。
 何故不意にそんなことを思い出したのか。

「初めまして。……と言った方が宜しいかしら」

 自分と同じ髪色、目。声色こそ非なるものの、目の前に立つ女性は、余りにも自分と似すぎていた。彼女が手に持つ扇子を広げて口元を隠すと、余計に瓜二つのような気がしてならない。
 気味の悪さに眉をしかめたまま呆然としていると、女性は軽く息を吐いた。冬も近くすっかり冷え込んだ空気は、息を白いものに変える。

「この地に来たら会うだろうとは思っていたけれど……本当に会ってしまうなんてね」

 同じ表情で朔太郎を見つめる。
 口振りからして、どうも朔太郎の事を知っているようだ。朔太郎の方にはまるで身に覚えがない。
 だが、初対面の割には何故か妙な気持ちが芽生える。昔から知っているような――とにかく、初めての気がしないのだ。

「アンタ、一体誰なんじゃ。オイラには……」
「……忌々しい。お爺様の口調を真似するなんて」

 目を細めて朔太郎を睨む。そして扇子をパチン、と音を立てて閉じると、その先を朔太郎の方へと向けた。

「しかし今は好都合。……椎束朔太郎、貴方の持つ"剣"をお渡しなさい。あれは貴方が持つに相応しくない代物です」
「……!何でアンタが"剣"の事を知っとる。あれは、」
「椎束家の人間しか知らない、と言うならば答えは解りきっているのではないかしら?……それとも、解りたくないだけかしらね」

 目の前の彼女から紡がれていく言葉に、朔太郎の思考はどうもついていけていない。

 彼女のいう剣は、椎束家の現当主から次期当主へと預けられる刀の事である。
 五代目当主である朔太郎の父・椎束影月(しいたばえいげつ)が朔太郎へと刀を預けた事は紛れもなく事実なのだが、その事は椎束家に連なる人間しか知らされていない筈。ましてやこのフィーダムデリアには、朔太郎のそういった経緯を知る人間すらごく僅かだ。

 ――解りたくない。彼女の言う通りそうなのかもしれない。
 先程から脳裏にちらつく、一つの仮定。それが真実であると確かめる事を恐れているのだ。

「そこまでにしておくさね、お嬢」

 朔太郎の後方から聞き慣れた声がした。振り返るとそこには白井雪白の姿。

「雪兄さん?!」

 朔太郎と目の前の女性、二人が同時に彼の名を呼ぶ。全く同じ呼称で。呼ばれた主は何食わぬ顔で二人の間に割って入る。

「お嬢、あっしと朔坊は仕事帰りで疲れとる。その話は今度にしておくんなせ。疲れている人間に無理強いするような娘でもないさね?」
「……その男の肩を持たれるのですか、兄さん」
「そういう心算はないさね。しかし、お前さんが知っている事は朔坊は知らない。そういうのは不平等かと思っただけだわな」

飄々、といった言葉が似合うのだろうか。白井は朔太郎の肩に手を載せながら、女性の方へと視線をやる。
ややあって、女性の方が折れたのか口元に扇子を当てて軽く溜め息をつくと、此方の方に背を向ける。

「……この場は兄さんのお顔を立てておきます。我ながら出過ぎた真似をしてしまいました」

声にはやや不服の色が灯っているものの、白井の言葉は最もであると理解したらしい。

「ですが、私は諦めた訳ではありません。……次に会った時は……椎束朔太郎。貴方から必ず、“剣”は頂戴致します」

その言葉を最後に、女性は二人の前から去って行った。朔太郎の表情からは未だ困惑の色が見える。
それを知ってか知らずか、白井は朔太郎の額をコツンと指で叩きながら、朔太郎の目を見つめ微笑んでいた。
朔太郎はそんな白井の様子を怪訝に思い、堪らず問いかける。

「……兄さんは、全部知っておるのか」
「曲がりなりにも朔坊の家とは親交が深い。それなりに事情は把握してるさね」
「なら、あの女性は……!」
「待たんせ、あっしから全部話を聞く気かね?」

白井も途端に真面目な表情となり、朔太郎はその先の言葉を濁す。

「あっしから話を聞く事は簡単。……しかし、朔坊はそれで良いと思っとるね?」
「……すまない。兄さんの言う通りじゃった」
「謝る事は無いさね。……あっしの助けは無くても、朔坊は大丈夫とね?」

白井の言葉に朔太郎は強く拳を握る。
自分なりに“あの子”と向き合いーー前を向くと決めたばかり。
ならば、取るべき行動は一つ。

「あぁ。……父様に、直接問いただすまでじゃ」

朔太郎の目に確かな光が灯る。
それを見て、白井はまた柔らかく微笑んだ。




ーーーーーーーーーーーー

白井兄さん、お借りしました!





再会。-前-






「……また会ったみてェだな、クソガキ」

 ピリピリとした空気の中で、目の前の小柄な男は薄い笑みを浮かべる。
 アロウがその男を忘れる筈も無かった。手に持つ大型の斧――バルディッシュを両手に握り締めながら、男の方へと其れを向ける。

「まさか永久機関の人間だとはな。納得したぜ、そのツラ」

 約二ヶ月前に街でアロウと対峙した男。
アロウより一回りも二回りも背丈が小柄であるにも関わらず、力には自信のあった自分をいともたやすくいなした人物。という事がアロウには相当な屈辱だったらしい。
 アロウの嫌味混じりの言葉を、男は気にも止めず鼻で笑う。

「ハッ、口の減らねェガキが。御礼参りのつもりかよ」
「それはついでだ。……オラクルの場所、知ってんだろ、吐けよ」

 この男と対峙した以上私情も含まれるが、優先すべきはオラクルの所在である。
 数日前に永久機関の人間に拐われたというガーネットの話を聞き、ヴィクター等同じユグドラシルの同志数人でこうしてオラクル救出の為に出向いたのだ。目的を忘れてはいけない。アロウ自身もその事は重々に承知していた。

「……ふゥん、お前もあのユグドラシルだかいうトコのモンか」
「だったら何だってんだ」
「確か、ゴッドチャイルドを保護だとかなんだとかほざいてる連中だったかね……くだらねェなァ」

 そう言って男は腰に付けていた剣を引き抜き、その切っ先で空を切った。男から発せられるジクジクとした黒い殺気のようなものが、アロウの肌にも伝わる。

「くだらねぇだと?くだらねぇ研究してんのはテメェら永久機関の方だろうが!」
「吠えてんじゃねェよ、俺は機関の研究なんざ興味ねェ」

 先に動き出したのは男の方だった。即座にアロウの方へと詰め寄り、右手に握る剣を上から下へ、アロウの頭を狙いに斬りかかって来た。アロウは片足を後ろに引き衝撃に備えながら、同時にバルディッシュの柄を横に構えて男の剣撃を受け止める。
 思っていたよりも男の一撃は重く、舌を打ちながら力ずくに柄を振って男を振り払った。しかし男の表情は余裕そのものであり、宙を返りながら後退する。

「教えてやるぜ、クソガキ。機関の研究員の中にも、馬鹿な奴はいるもんなんだよ。ゴッドチャイルドを自分の研究の為じゃねェ、護る為にだとかなんとかほざいていた奴がな。ーーお前によく似た色のした女だ」
「……俺に、似た……」

前にもこの男からその話を聞かされていた。その時から、アロウの中で一つの仮定が生まれている。ただ、それを口にする事は、自身の中で少々躊躇いがあった。
ーーだが。

「その女……もしかして、ハリエットとかいう……」
「ハッ、心当たりはあったみてェだな。アタリだよ!」

アタリ、という男の回答にアロウは身体を強張らせた。
忘れるはずもない、そのハリエットという名前はーー

男はアロウの空気の揺らぎを敏感に察知し、直様アロウに向けて剣を振るった。今度は身体の捻転を加え、先程よりも重いのが来る。とアロウは頭では理解していた。だが、身体が完全に硬直してしまっている。仮定が確信へと変わった時の衝撃は、アロウ自身予測だにしていないものだった。
ーー避けられねぇ……!

「オトギ!!」

咄嗟に目を瞑り男からの一撃を確信した刹那の事であった。聞き覚えの無い少女の声に、男の動きが止まった。剣筋は寸での所、アロウの腹部の手前で停止していた。
声のした方へ振り向くと、そこにはゆらゆらと光のように揺らめく、表情にあどけなさの残る少女が、男の姿を見て目を輝かせていた。





ーーーーーーーーーーーーー
後編へと続きます(多分←
アリョーシャちゃん、お借りしました!




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